「僕、出版社の人に会いに行ったよね」
西野さんは消えそうな声で呟いた。俺たちはどうしたんだろうと心配になった。
「そこでね、今までのこと謝ったんだよ。ずっと一方的に逃げていたから。でも、いざ話し合いになると、僕たえられなくなっちゃって…」
涙を拭いて西野さんは顔を上げた。
「つい、殴っちゃったの」
語尾にハートマークがつくくらい甘く西野さんは言った。だけど、俺と竜北さんはそれが冗談じゃないんだろうなってことは予測ができた。
「僕、優しい言い方する癖に、根性が曲がっている人大嫌い」
「西野っ」
「西野さん、何か!?」
「…本当、気持ち悪いんだよ、何が『君、可愛いね』だよ、俺はノーマルだっつってんのに、あのくそ野郎め!」
悔しそうに、西野さんは瞳を歪めた。
「俺は別に、プロになるなんて一言もいってねぇのに、人のこと詮索して何様のつもりなんだよ。んで、俺が上から目線でもの言われないといけねぇんだ! 人がせっかく下手にでてやったっていうのによ」
その日の夜、俺と竜北さんは西野さんのお話をずっと聞いていた。長くなるので、簡単にまとめると、つまりはこういうことになる。
友達が勝手に西野さんの作品を送ってそれが入賞した→けど西野さんは正直に理由を話してプロになることを断った→向こうは承諾した→でも賞を取った人が参加するパーティーには参加した→出版社の息子が西野さんに一目ぼれ→傍に置きたいとだだをこねはじめる→出版社やっきになる→怖くなって西野さんは無視をはじめた→でもちゃんと話さないといけないと思った西野さんは今日出版社へ→息子さん大感激→一方的に偏った愛を西野さんに注ぐ→西野さんはキレて殴る→おわり。

「でも、何よりも、僕は、自分の作品を、エロはエロだけでいいとか言われたのがショックだったかな…」
だいぶ話してうっぷんが取れたのか西野さんはいつもの優しいしゃべりかたでホットミルクを一気飲みした。




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