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その後、西野さんは、俺にずっと冷たく当たっていたことを簡潔に「惹かれていたから」と、説明してくれた。俺は嬉しくて、西野さんの前だと言うのに、ガッツポーズをした。
すると西野さんは「僕に似ているところもあったからかな」と小さく笑った。
俺が何処が似ていたのかって聞くと「周りに溶け込もうとして公私を分けたことがあるところ」と言う。あながち間違ってはいないと思ったけど、そんなことで俺に惹かれたとしたらこれから先いっぱいそんな奴はいるだろうから、なんて俺が不安に思っていたら、西野さんは「それだけじゃないからね」と俺のことを小突いた。

「だって、上条くんは僕と一緒なのに、僕と違って、頑張っているって言うか、そのしがらみから抜け出しているようで、憧れて、でもそんなの認めたくなくて…」
冷たくしたのはそのせいだと西野さんは再度言った。
「でもね、気になっていたから、よく見ていたんだよ。そのせいで、上条くんのどうしようもない、前向きって言うか馬鹿さ加減が好きになったのかな?」
「馬鹿って、言われても嬉しくないです」
「え、そう、なかなかの褒め言葉なのに?」
「褒めてくれてたんですか? ずっと」
「まさか」
西野さんは気持ちのいいくらい笑顔で否定した。
あれ?

「僕が面と向かって親しみをもった馬鹿だとか言えるのは上条くんだけだよ」
「俺だけ?」
「うん」
それってすごく特別じゃないだろうかって俺は嬉しくなった。すると西野さんが「そういうところを馬鹿って言うの」と呟く。けど、俺が西野さんの方を向くと小首を傾げられた。どうやら、空耳のようだ。なんて、納得するって馬鹿かな。でも、馬鹿みたいに、好きです。て、馬鹿みたいに一途だ。てことは、西野さんはこれを褒めてくれているんじゃないだろうか。
「本当にそういうところ使いやすくていいよ、上条」
「え? あれ? あ、はい、そうですかね!」





第八話 完結



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