「俺、二度読みして、気がついた」
「奇遇ですね、俺も、二度読みで気が付きました」
必死に涙をこらえながら俺たちは向き合った。
「主人公のミヨは最初から、カズのこと好きだったんですよ、絶対!」
「わかるか、そうだろ、ミヨは一切そんなこと言わないが、これ絶対、カズのこと好きだよな! ここのさ、49ページの先輩とヤるシーン、これ絶対にカズのことかばっているって!」
「ですよね、ですよね、そこ、一回目は何してんだって思ったんですが、なんで俺、ミヨのこともわかってあげられなかったんだろう」
「ミヨは好きでセックスしてんじゃないのに」
「なのに、この後58ページで、カズとっ」
「うっ」
俺たちは机に伏せた。もう、次から次へと感情が溢れて止まらなくて、どうしたらいいのかわからなかったからだ。



*****


「お昼はごめんねーっ」
差し入れ持ってきたぞ☆と可愛らしい声が聞こえて、俺は勢いよく机から顔を上げる。すると、両手にスーパーの袋を抱えた西野さんが、驚いた顔で俺たちを見つめていた。
「……あの、お二人さん、職場でそんなもの読んだら、いけないと僕は思う」
「「え?」」
俺と竜北さんは声をそろえて、頭を掲げた。きっと俺たちは西野さんの素敵な作品の中からまだ抜け切れていないんだろう。




- 8 -


[*前] | [次#]
目次に戻る→


以下はナノ様の広告になります。
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -