[愛しい気持ち]



1.何を探しているのですか?

ふと、君が好きだと、気がついた。
困ったことにも、その好きは、友達としての好きではないのだと、気がついた。
何気ないスキンシップに顔が赤くなるし、心臓はバクバク自己主張すし、上手く話せなくなるし……完全に、不審者だ、俺。
こんなことなら、気づきたくなかった。気づかずにいたかった。今まで通りでよかった。だって、俺、普通にしていられない。君への想いは自覚した瞬間に加速して、いつか、自分をなくしてしまいそうで、怖くて。怖くてしかたない。
そう俺は君が好きだから君を失いたくない。俺は真っ直ぐに笑いかけてくる君を失いたくない。この関係を大切にしていきたい。友達だから。俺は君の友達だから。だから、探しています。

この好きを亡くす方法を。






2.こんなにも眩しい世界で

「ずっと友達でいてくれよな!」
君はある時、そう言った。顔を赤らめて、可愛らしく。なのに、俺は上手く笑えなかった。馬鹿だ。馬鹿、せめて返事くらいしろよ、俺。ほら「うん」と頷け。ほら福沢は笑って幸せそうにしてくれる。そしたらさ、俺も幸せな気持ちになる。な、そうだろ、そうだよな…?
なのに、どうして、福沢は悲しそうな顔をするのだろう。俺、上手く頷けなかったのだろうか。どうしよう。気持ち悪いとか思われて……ばれた?
「蒲田?」
福沢は心配そうに俺を見上げた。軽蔑はされていない。この想いはばれていないみたいだ。じゃあ、どうして…そんな…
「泣きそうな顔するんだよ…」
俺は福沢に問い掛ける。福沢は困ったような顔をして「それは」と言う。

「それは蒲田の方だろ?」






3.うわべの儚さ

「え?」
俺は福沢の言葉に驚いた。その瞬間、涙が、ぽろぽろ溢れ、とまらなくなった。どうしよう。どうしたらいいんだ。俺は考えた。考えた結果「嬉しくてつい」と言った。嘘じゃない。とても嬉しい。ずっと友達ということは君のとなりにいつまでもいられるということだ。ただ、それ以上に胸を締め付けるこの痛みが全てを台なしにしようとするだけ。君はわるくない。俺が、俺のこの恋が、わるい。

「嘘つくんじゃない!」
蒲田はそう言った。蒲田は、震えながら、俺の腕を掴んだ。蒲田は、掠れた声で小さく言った。

おままごとはもうおしまいだ、と。





4.涙浮かぶ

「俺が気付かないと思ったのかよ、最近、蒲田、俺のこと避けているだろ?」
「え?」
「え、じゃない。避けているじゃん」
ずっと、気づかないふりをしてこのままでいたいと俺は思っていたと福沢は言った。
でも、俺は、その言葉に上手く返事はできなかった。
だって、だって、俺にはコントロールできないんだ。この想いは。
ただただ、涙浮かぶ。
君の顔が遠ざかるようにかすんで。
俺は…






5.本当はもう気付いている

「本当はもう気付いている」
福沢はそう言った。
俺は、もう、終わったのかと思った。
「そうか…」
ばれてしまっていたんだ。俺の気持ち。
気持ち悪いと思われていなければいいな。
「そうだよ、俺さ」
福沢は俺の手を取って「ごめんな」と言った。
「俺、好きなんだ」
「え!?」
俺は福沢のその一言に驚いた。
それはどういう意味だ。
俺の気持ちに気づいているんだろ?
え?
あれー?
「福沢、どうしてんだよ、急に」
「え? あれ、お前、気づいていたんじゃ、それで、俺のこと避けていたんじゃ…、あれ、え?」
「ええ?」
「え?」

俺たちは疑問符を掲げまくった。
お互いに信じられない事実と、勘違いに、頭がついていかなかった。

だから、俺たちがお互いの想いに気がついて、付き合いだしたのはもっと後の話になる。




-fin-

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