[鉛筆くんと消しゴムくん2]



時間は限られているものです。
鉛筆くんも消しゴムくんも、自分たちの命が残り少なくなってきたことにも、目をそらしていられなくなりました。
それでも、二人は悲しみながらも、笑いました。
「それが全てじゃない」
そう言って、寄り添い合って。

私にはわかりませんでした。

大切な人がもしもいなくなるとしたら、それはとても耐えられるものではないと思うのです。

私は鉛筆くんが好きでした。
ですから、鉛筆くんの命が残り少なくなってきているのに、私が気付いた時、本当に悲しくて仕方なかったんです。
なのに、消しゴムくんはこの気持ちを分かち合ってくれませんでした。消しゴムくんなら、私のこの悲しみを分かってくれると思っていたので、とても、ショックでした。

「それでも」
消しゴムくんは言いました。
「それでも、今はここにしかないんだ」

「え?」

私は質問しました。
それがどういう意味のかわかりませんでした。

すると消しゴムくんは言いました。

「未来のことで泣きたくなるし、いろいろと悲しくなるけど、今、あいつがいる今を、未来の不安でなくしてしまうのは違うと思うんだ。悲しむことも孤独になることも後でいっぱいできるけど、今は今しかないから。あいつと笑い合っていられるのは今しかないから。大切にしたいんだ」

「……そうですか」
私はそう以上何も言えませんでした。

消しゴムくんは「俺だってたまに泣くよ」と不器用に呟くと「あいつのこと好きでいてくれて、ありがとう」と言いました。

私はこの時思いました。
どうして、鉛筆くんは私ではなく、消しゴムくんを好きになったのか。


私は紙です。

鉛筆くんの想いを残し、消しゴムくんの後を残せる、記憶のツール。
だから、私は残しましょう。二人の愛をここに。




★★★

もっと書きたい気もした文房具擬人化。
第二弾のここで終わらせておきます。
また、ひょっこりと書くかもしれませんが…
少しでも、鉛筆くんと消しゴムくん、また、紙くんがあなたの心に残って下されば嬉しいです。


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