[クリスマス]

幼馴染/受け視点/年下攻め




意地だった。
とくに彼女もいるわけでもないのに、
いるように見せてみたのは
意地だった。

クリスマスに一人っていうのが
惨めに感じて、
俺は嘘をついたんだ。

今その嘘のせいで大変な目にあっている。



*****


「なんで、俺にまで嘘吐いたの?」

いつもニコニコしている俺の幼馴染。
裕也は深刻な表情で言う。

「どうしてってそりゃ…」

俺は言葉に詰まった。
なんていうのか、さ、ぶっちゃけると
俺はいつでも裕也の前を歩いてるお兄さん的な存在だったんだ。
なのに、さ、

「ていうか、お前は彼女とすごすんだろ!」

「……え?」

裕也は何を言うんだって顔をして俺を見つめた。
俺はわからなくなった。

「あれ、お前、彼女できたんじゃなかったのかよ?」

「いや、いや、待て待て、俺に何時彼女が出来たんだよ?」

「だって、俺にクリスマス恋人に何処に連れて行ってほしいかって聞いたじゃん」

「聞いたけど、だからって彼女がいるとか…どうして勘違いされるんだろう」

「え、裕也。だったらなんで俺に、そんなこと聞いたんだよ」

意味がわからないと俺は溜息をつく。
なんだか一人で悩んで損したみたいだ。
裕也に恋人が出来たのなら、俺
いつだって裕也の前を歩いてきた俺は
俺にはとっくにいないとおかしいなんて
考えたなんて…
馬鹿らしい。

「なんで聞いたかって簡単な話じゃない?」

「…裕也、お前、たまに変な行動とっていると気がつけ」

「変? 俺が、貴方に素敵なクリスマスをプレゼントしたいって言うのは…」

「え?」

「だから、聞いたんだ。みんなちゃんと予約取ったし、行こうか」

そう言って裕也は俺の返事も待たずに歩きだした。
俺は雪の降り出した歩道で裕也の腕を掴む。

「待て待て待て、俺が話した恋人にって話、なんで実行しようとするわけ」

だって、俺、おもいっきりデートコースと、ホテルの話ししただろ?
男二人でやるようなことじゃないだろ?

「よく考えろ、俺たちは恋人じゃないんだ」

必死に言葉を紡いで、俺は泣きそうになった。


「恋人じゃないんだ」


俺はくり返す。

裕也に彼女が出来たと思った時、どんな気持ちだっただろう。
嫉妬、焦り、いろんなものがあった。

だから、意地を張った。
強がった。

俺はたぶん、きっと、裕也のことが好きなのだと思う。


だから、必死になって年上の威厳とかいいながら、
自分の今もポジションを守っているんだろう。

裕也の傍にいられるように。


これからも変わらなくても、ずっとそばにいられるように。


なのに、お前は何を脳天気に俺を、
苛めるようなことしようっていうんだ。


「あの…さ、俺、好きだよ?」

「何が?」

「あなたが」

「へ?」

俺は裕也が何を言っているのか理解できずに固まった。

「結構、好きだって言ったし、愛情表現はしてたんだけど」

気がつかなかった?
と裕也は言う。

俺は誤解しないようにといつも気をつけていたと、
返事をした。


「それに俺たち長いこと一緒じゃん。恋人みたいなものじゃん、もう」

「裕也…」

「泣くなよ、格好悪い。でも可愛い」

「んば、ばば、ばか、ばか!」

俺は恥ずかしくなって手を振った。

裕也はそんな俺を優しく見つめていた。


余裕のある俺でいたかった。
ずっと裕也の手を引いていた俺だったから。
でも今日は裕也に手を引っ張られていた。
不思議な気分。
でも悪くない。

だって裕也は言ってくれたんだ。

これからは二人で歩いていこうねって。



俺はもう君のお兄さんじゃなくて
俺はもう君の恋人になったんだ。



対等な、立場に。



だからね、もう強がらないよ
意地を張らないよ。

そのかわり君がそうしろっていった責任取ってよね!




メリークリスマス!






end...


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