[大空に夢を見た]









何処までも自由だと思った

大空に夢を見た。
何処までも自由だと。

何処までも…






煩わしいことから助かるって思った

俺はビルの上から、見慣れた町並みを見渡した。都会の喧騒に泣き出したくなった。
俺は、いつも、この町並みに泣かされていた。
わからないんだ。
ただ、わからない。
どうしたら、そんなにもこの世界に溶け込めるものなのか。
いっそ、羽ばたけたらいいのにって、いつも、そう、いつも、想っていた。
そうしたら、この、孤独は何処かへ消えて、自由になれるのだと。
そうだ、煩わしいことから助かるって思った。

君が好きで、俺は辛いんだ。

君を好きになって、淋しいんだ。
ただの片想いなのに、俺は君を束縛したいと考える。そんな自分が大嫌い。






今なら羽ばたけるって思った

今日は「いちいち、うるさい」と君に言われてしまった。
今なら羽ばたけるって思った。
もう苦しみたくない、もう困惑させたくない。
俺は知っているんだ。
君は優しいから、優し過ぎるから、俺は甘えて、君に無茶苦茶なこと押し付けて。
いつか、本当に、君に見放されるんじゃないかって思うから。
そう不安になるから…
もう…







君を忘れられるって思った

「何してんだ!」
「え?」
俺が屋上の端に立つと、君の声が後ろから響く。
振り返ると馬鹿みたいに驚いている君の顔。
「何って、人生のリタイアしようと」
「馬鹿、なんで!」
「君を忘れられるって思った」
「は?」
「いらないんだみんな、もう」
「何だよ、なんか、わかんねーけど、俺は、お前がいない世界なんて嫌だ! だから、飛ぶな! ここにいろ!」
「……っ」
「いつも、俺は、お前の我が儘聞いただろ!? つぎは、お前が一つくらい聞く番だ! いいから、とっととこっちこい!」
「うん」
俺は君の元へと歩いて行く。
君は何も言わず俺を抱きしめた。






愛しているって気付いた

ああ、
大空に夢を見た。
愛しているって気付いた。



★終わりです

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テーマ「人外ファンタジー」
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