君の笑顔、僕の幸せ




ほんまは嫌やったよ。
ほんまは誰にも龍を取られたくなかったんや。


やけど、僕は思うねん。

龍の笑顔も誰も取ったらあかんねん。
誰も龍を悲しませたらあかんねん。

やから、しかたなしやで、しかたなし、僕は自分の気持ちにふたをして、今も龍の友達でいる。



*****


仕事が終わったら清志に呼び出された。
龍が帰ってから僕だけを社長室に呼んだんや、清志。

ほんま、複雑やわ。


「話ってなんやの?」

僕は聞いた。
長い沈黙は嫌いやから。
さっさと本題に入ってほしかったんや。
そしたら、

「…お前は本当に勘がええんやな」

俺はまだ話があるとか一言も言ってへんのにな、と清志は言う。

たまに僕は思うんやけど、清志って本当に頭いいんやろか?

呼び出しておいて、話じゃないとしたら、他に何があるっていうんや…ちょっと逆に聞きたいわ。


「いやさ、本当にこんなこと聞くのはよくないと思ってる。シロに不快な思いをさせるかもしれへん。やけど、どうしても聞いておきたいねん」

いいいかな…と不安げに清志は僕を見つめた。

「ええよ」

別に聞かれて嫌なことなんて僕にはあらへん。
僕を作ったのは清志やで。
僕は清志の性格まんまちゃうん。
考えることきっと同じやから、何を聞かれても、反感はしいひんよ。



*****


「あんな、シロは龍一のこと、まだ好きなんかな」

「好きやで、知っとるやろ?」

清志が僕を作った時に、受け継いだものだとしても、僕は本気や。

「でも、安心してな。清志」

「え?」

「大丈夫や、心配するようなことはあらへん。僕を作った人もな、龍のこと好きやったんや。けど、その変人はな、決して龍の嫌がることはしなかったんやで。自分の気持ちよりも龍のことを思っとったんや。尊敬するわ」

馬鹿らしいって思うわ、ほんま。

「それに、僕は充分や。笑っている龍のそばにいられたら、幸せや。龍には笑っていてほしい。ほんま、嫌やわ。一番似たくもない人に似てもうた。損な役回りやしなぁ」

「…さっきから、人のこと変人とか、言うなよ」

「え、ほんまの、ことやろ?」

「そ、やけど」

もっと言い方とかないんか。。仮にも、俺はお前の生みの親やで。
そう言いながら、清志は切なそうな顔をした。


「最近、考えていたんだ。もしも、俺がシロの立場だったら、辛いって。だから、俺な俺な…」

「いらんわ、あほぉ!」

「…シロ」

「記憶消すのとか、いじるのとか、勘弁や。僕はいいんや。龍を好きでいられることが嬉しいんや。そりゃあ、辛いと感じた日もあったけど、そんなん、もう過去のことや。今は違うんや」

「違うって…?」

「そのまんまの意味や」

清志ならわかるやろって僕は笑った。
そしたら、清志は、
本当に変人に似て可哀相なシロちゃんだ、
と笑った。


そう、僕は清志に作られたから、清志の気持ちはよくわかる。

いつもどんな気持ちでおったかも知っとる。

清志ならわかるやろ。


僕にとっても龍の幸せが僕の幸せや。
あほぅ。





‐fin‐







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