「俺…千香ちゃんが好きです。千香ちゃんがいいんです。どっちでもいいですよ、そんなこと」

好きだから、どうしようもないですね。
と俺は言った。

千香ちゃんは俺にしがみつくと、好きにしていいよって言った。


「好きしていいんですか? じゃあ、俺は千香ちゃんのそばにいます」


嫌がられてもいますからねって俺は千香ちゃんを抱きしめた。

重要なのは、大切にすることだと俺は思った。

手を出してしまってもいいんだけど、今、勢いだけでそういったことをしてしまうのはもったいない。


「…やっぱり、俺じゃ…できない?」

なのに、俺の意思も軽く飛ばすように、千香ちゃんは俺にそんなことを囁く。

俺は千香ちゃんの手を俺のものにあてて「わかりますか?」と言った。

「あはは、千香ちゃん、本当はめちゃくちゃにしたんですよ、これで…」

「していいよ」

「しませんよ、そんな、罪滅ぼしみたいなこと、言われても」


黙っていたことに罪悪感かんじないでほしい。

俺はただ俺のこと好きでいてくれたらいい。


「千香ちゃん、俺は、ずっと千香ちゃんが好きだったんです」

「え?」

「人違いじゃないでしょ。本当は心のどこかで気が付いていたような気もします」


あの頃の千香ちゃんは貴方だったんじゃないですかと聞いたら、千香ちゃんは小さくうなずいた。


もういいじゃないですか、もう、
千香ちゃんが俺を好きだって言ってくれるなら、
他に難しいことなんて、考えなくても。


俺は何回も千香ちゃんにそう言って、抱きしめた。



いつか、貴方が本気で泣きだすまで。







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