愛おしくて…
=侑side=
シャンプーの匂いがして、湿った髪のままの千香ちゃんがそこにいて、
バスタオルを巻いているだけで…
俺は、どきどきしてしかたない。
「水戸くん」
なのに、千香ちゃんときたら、泣き出しそうな顔をして、
俺の名前を呼んだ。
理性ってなんですか?
俺は思いっきり、千香ちゃんの手を取ると、そのまま、床に押し倒した。
ほどけたバスタオルに、俺は息を飲んだ。
「やっ…」
千香ちゃんは隠そうとしたみたいだけど、俺の方が早く、千香ちゃんの手を取る。
「大丈夫だよ…さっき、見たから」
「え?」
「だから、お風呂場で、見たから、これ」
「ひゃぁあ」
俺は千香ちゃんの男の子の証を握った。
千香ちゃんは声を上げながら、ごめんなさいと言った。
本当は言おうとしたけど、言いだせなかったことや、
俺が離れていくって思っていたことや、
ぼろぼろと泣きながら、千香ちゃんは言った。
どうして、この人はこんなにも、愛おしい生き物なんだろう。
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