一途な君




「……あの、よろしくお願いします」

俺の家の台所でエプロンをつけて丹羽くんはお辞儀をした。

「ああ、はぁい」

あれから、成り行きで俺は丹羽くんに、料理を教えることになった。

…本当は水戸くんと向き合う時間をごまかそうとしただけかもしらないけど。

でも、丹羽くんは飲みこみが早かった。
素直だから、すぐに言われたとおりに覚えていくし、真剣に取り組んでくれる。

なんだかとっても教えがいがあるな。
にこにこと楽しそうにしている丹羽くんを見ていたらとても可愛い。

ただ煮込むだけの料理も愛おしそうに鍋を見つめてそこから動かない。


本当に部長のことが好きなんだなって思った。


水戸くんも、丹羽くんみたいに、男の人が好きだったらいいのに…

でも、それじゃあ、女の俺を好きになってくれなかった。

いやいや、たとえ水戸くんが男の子が好きだとして、俺を好きになってくれるだろうか。

俺って女顔だし…やっぱりな…


「もう、ふたとってもいいですか?」

「え、ああ」

ウキウキと鍋のふたを開ける丹羽くんを見ていると、なんだか、元気が出るな。


俺もこれくらい素直になれたらいいのにな…






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