ダブル神崎




会社に行くと、神崎さんがニヤニヤとしていた。

「千香ちゃん」

優しい言葉使いなのに、俺は背筋が凍る。
つい、最近ばれたんだよね。

神崎さんに俺が会長の秘書で男だって…
と、いうか、かつて仕事を教えた部下が、女装しているって。

「なんですか?」

「あれ、語尾にこの野郎はつかないの?」

「まさかー、そんな、はしたない言葉なんてつかわないですよー」

「へー、昔はよく、俺になついて神崎さん神崎さんって言いながら暴言はいてくれたのに…」

「あら、誰かと間違いやがっているんじゃないですか?」

「そんなへんちくりんな敬語も使わなかったのになー」

「……何が言いたいんですか?」


俺はついに本題を聞くことにいた。


「お、察しが早い子は好きだなー」

「それは同棲相手にいいやがれ…」

「あれー、なんか言った?」

「いいえ」

「そう?」

「そうですねー」


……辛い。
神崎さんって意地悪すぎる。

「…あ、忘れてしまった」

「え?」

「俺、千香ちゃんに何を言おうとしたのか、忘れたことにする」

「もともと用事もなく、俺をからかっただけかよ…」

「う? 千香ちゃん。俺、実は秘密を抱えるの苦手でさ、今、大きい声を出してもいいんだぞ?」

「は?」


「みんなー聞いてくれ―っ」

「ば、馬鹿っやめ…」



「今からお昼休みだー!」



……会長、俺、くじけてもいいですか?






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