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「…俺、勘違いだけど、会えたような気がして嬉しかったんです」
カラオケルームから出ようとしている彼女に俺はつぶやいた。
すると、彼女は顔を真っ赤にしてぼそぼそと俺の隣に戻ってきてくれた。
「あー、うー、その千香ちゃんとはどんな奴だったんだ? じゃないや…どんな人だったのですか?」
「敬語、使いにくいなら使われなくてもいいですよ?」
「そうか、ありがと、本当に面倒だった。女の子喋りもやめていい?」
「いいですよ」
「ありがとう、あんたはいい奴だなー。俺の知り合いなんて、女の子だろって、怒るんだよー。本当、女の子って大変だなって思ったよ」
「そうなんですか?」
「ああ、そう、じゃなくて、そうそう、千香ちゃんの話」
「はい。あれは俺が小学六年の頃なんですが…」
俺は全部彼女に話した。
担任を殴り飛ばしたことや、図工の時間の悲しみをなくしてくれたことや、いろいろ。
ほんの一日しか、千香ちゃんは俺の学校に居なかったけど、俺たちがどれほど、千香ちゃんがまた学校に来ないかと思っていたかとか。
「幼かったなって思いますよ。ま今もまだ会いたいとか思っている俺は幼いままかもしれませんが」
「…それは悪かった」
「はい?」
どうして、彼女が謝るんだろう…?
「ああ、違うんだ、きっと、千香ちゃんって子はそう思ってんじゃないかなって」
あたふたと両手を振りながら彼女は笑った。
すっごく可愛いと思った。
女の子なのに…
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