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ああ、そうそう。
忘れかけていましたが、そちらで、嫌そうな顔をして、書類とにらめっこしているのが、
俺の秘書である、神崎千香ちゃんです。
「……」
何やら、千香ちゃんは怒っているようです。
おお、怖い。
眉にしわを寄せながら、こっちに来ます。
「会長、さっきから、何を一人で百面相してんですか?」
「千香ちゃん」
俺はディスクの向こうに立つ千香ちゃんを見上げた。
すると、千香ちゃんは「うげっ」と俺から、目をそらした。
上司に向かって失礼な奴。
せっかくの可愛い顔が台無しだ。
「千香ちゃん。そんな顔しないで」
「お前のせいだろうが、お前の! だいたい、なんなんだよ。書類にへんな小説混ぜないでくださいよ! 全部読んじゃったじゃないですか? 馬鹿!」
千香ちゃんは真面目だ。
口は悪くても真面目だ。
だから、途中に書類の中にBL小説を混ぜても、同じ速度で、他の書類同等に読んでいく。
そのくせが直せない、そんな千香ちゃんは可愛いと思う。
なによりも使いやすくていい。
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