酔った。酔った。
世界がふわふわとしていて、楽しい。
なんか、悲しいことがあったようにも思うけど、今は何も感じない。
俺は「送っていくよ」という、永太の誘いを断り、一人、夜道を歩いていた。
タクシーにのるような金持ちではないんだ。俺。
だって、ぴちぴちの大学生だもん。


「きゃつ…」

「痛!」

俺は何かにぶつかった。
ま、声からして人にぶつかったようだが、どうやら、女の子のようだった。
そう、俺の興味に無い女の子。
なのに、どうしてだろう。
俺、その子の可愛さに、少しばかりときめいている。

…俺も、普通になれたのかな、やっと。

とか、考えていると、女の子は「ちゃんと前見ろよな」とまるで口の悪いガキのようなことを言った。
が、少しして「あら、嫌ですね。ごめんなさい」と笑ったのだった。

俺は、わけがわからなかった。

街角で、呆然としていた。


その女の子が去った後も、俺はしばらく、彼女のことが忘れられずにいた。






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