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下校しようとしたら、急に雨が降り出した。
俺、傘持ってきてないんやけど…
しゃあないな、携帯で家の使用人に傘をもってきてもらおう。
たまには使ってもいいよね。
普段は何もさせていないけど…
「チトセ、傘は?」
「あ、忘れたから、今電話して持ってきてもらおうと」
「俺のちょっと大きいから一緒に入っていけば?」
「え?」
「ほら、そんなにも大雨ってわけじゃないし、さ」
「いいの?」
「チトセだけな」
「……あ、ありがとう、じゃあ」
俺は携帯を鞄になおすとユウキに寄り添った。
恋人みたいやねって言いかけて、あ、俺たちって恋人になったんやったと自覚した。
「ほら、もっとこっちによらないと濡れるぞ?」
「や、でも、ほら、あんまりくっつきすぎたら…」
「周りなんて、みんな自分たちが濡れないことで頭一杯だし大丈夫だと思うけど?」
「そうじゃなくて、ドキドキしてんから、俺のドキドキがユウキに聞こえたらいややって…あ、言ってしもうた!」
「……あんまり可愛いことを言わないでくれ」
「なんで、俺そんなん言ってないって!」
「いや、俺にはもう抱きしめてくださいって言われているかのように聞こえる」
「……それは」
そないなつもりで言ってないけど、調度、人気のない道に入ったから、抱きしめてほしいって想ったりはしてるけど…
「ちゃうねん!」
「じゃあ、俺、我慢する。チトセが、嫌がっているのに、抱きしめたりしないよ」
「…ユウキ」
「う?」
「その、キスして?」
「チトセ…」
「う…ん…」
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