寝癖と傘と「チトセside」




俺の髪の毛の寝癖がなおらない。
どんなに、いろんなワックスを駆使しても、どうしてもなおらない。
そりゃあ、一度、なおらない寝癖に悩んでみたいとか軽々しいこと言ったけども、これはあんまりだ。
こんなん恥ずかしくて、外出たないよ。


ピーポン。


「わああ、もうこんな時間やぁあ」

チャイムの音にふと我に帰ると俺は慌てて荷物を鞄に突っ込んで家を出た。
門の横で、ユウキがちょっと顔を出してこっちを見ている。

「ごめん、寝癖なおんなくて!」

家の玄関から門のところまで走りながら俺は大声で叫んだ。
するとユウキが「そんな恥ずかしいこと大声で言うなよ」なんて笑っている。
人事だと思って、この、親友……じゃないや、恋人は適当な!


「……やって、ユウキ待たせてるのに、俺、ちゃんと理由も話さないとか嫌だったんやから。やから」

「だったら、ここまで来てから言ったらよかったんじゃないのか?」

「ああああ!」

全くもってその通りだ。
俺ってなんか馬鹿?

「ま、落ち込むなって、チトセはどんなチトセでも、俺は好きだな」

「……昨日から、ユウキは恥ずかしいこと言いすぎや」

「なんで、言ってもいいような関係になれたんだから、言いたい」

「や、その、駄目ってわけやないんやけど、ほら、恥ずかしいやん」

「照れてる顔、一番好きかも」

可愛いよなんて何度も言いながら、ユウキは人目のつかない所で、そっと俺の額にキスをした。


いつもクールなのに、このギャップはなんやろう。






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