清算・1
「…え?」
俺は自分の気持ちを全て彼女に話したのに、彼女は知っていたよなんてあっさりと別れ話を了承してくれた。
ごくそれが当たり前かのように…
「ユウキ、私ね、ユウキの恋人になりたいってどうして思ったと思う?」
「……それは俺もわからん」
彼女なら、俺じゃなくてもよかったはずだし…
「気まぐれ?」
「ちょっとそれはいくらなんでもひどいよ」
そんなわけないじゃんと彼女は笑った。
よく笑う子だなと思っていたが、こんな時でも笑えるんだ。
本当はそんなに俺のことなんて好きじゃなかったのかもしれない。
「けど、本気じゃなかったんじゃないのか?」
「それは当たってる」
「ひどいだろ、それも」
「まさか、好きでもないのに、付き合う人に言われたくないよ?」
「え?」
「わかっているって、わかっていたって」
整った顔で彼女は「大切にされてみたかったの」なんて悲惨なことをいとも日常会話の様に言った。
「チトセくん、に向けている優しさが、ほしいと思っただけ」
ガキなんだよね、私、なんていいながら彼女は空を見上げた。
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