恋路・5
=チトセside=
一時間目の現国が終わると俺は急いでユウキの机の前まで行って、話があるからとユウキを教室から連れ出した。
別に後でもええんやけど、俺的にすぐに話したかったんやからしゃあないよね。
「この前、言っていた、忘れたいことって何?」
人目のつかない中庭まで来ると俺は真っすぐにユウキの瞳を見つめた。
「ずっと気になっていたんや。俺、ユウキの親友やん。少しくらいは何か力になれへんかなって」
「……チトセ」
「ほら、忘れてしまうってやっぱ寂しいやん。どんなに辛くてもそれがなくなるって寂しいやん。やっていちおいらないって思っても、それは忘れたいと願ってしまうほどに意識していることなんやろ。やったら、一回忘れても、また思いだしてしまうって。そうなったら、余計つらいって俺は思うんや。やから、やから、その上手く言えへんけども、その…」
話せば楽になることもあるかもしれへん。
一人で抱え込まんかったら、辛さは和らぐかもしれへん。
やのにな、
「…これは俺の問題だ」
チトセには関係ないとユウキは言いきった。
俺はそれがとても辛かった。
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