感情・8




「どうして俺がこんな想いをしないといけないの。おかしいじゃん。ミチユキが楽しそうにしていたの、が、寂しかったとか、なんで思うのだろう、なんで今、ミチユキが追いかけてくれて嬉しいなんて思うんだろう、わからないんだよ…」

「……誤解するよ?」

「何が、なんで、誤解するの。俺が最低だってことでいいじゃん!」

勢いよく振り返った田辺の顔、悲惨だった。
泣きたいのに泣き出せない子供みたいだった。

「ミチユキはいつも俺のこといい奴だって言ってくれていたけど、本当はそうじゃないかもしれないよ。ただ誰かに構ってほしくて俺がいい子でいただけかもしれないよ。俺、みんなが思っているような、天使じゃない…」

「じゃあ、どんな天使?」

「え?」

「俺は田辺とは長く一緒にいたし、ひそかにいつも見ていたつもりだし、わかっているつもりでいたけど、それが違うって言われたら、正しい答えが知りたいな」

「……だから、俺は」

最低なんだと言いかけた田辺の口を俺は塞いだ。
この前のキスみたいに触れ合うだけじゃなくて、もっと深いキス。
田辺のなかにある、矛盾する感情を吸えたらいいのにって思う、そんなキス。

「はっ」
唇が離れると田辺は思いっきり息を吐いた。

俺はついつい意地悪して「よかった?」なんて聞いてしまいそうになったけども、ぐっとこらえた。






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