感情・7
「あ、田辺おきていたんだ」
神さまと話しているんだと言いかけたら、田辺は何も言わずに俺に背中を向けて走り出してしまった。
「え…?」
はじめて田辺に無視されて、俺は、ショックだった。
「…なんで」
俺は神さまと繋がったままの携帯を耳から話すことなく思ったままを呟くと、電話から「追いかけてあげなさい」と言葉が溢れた。
そんなの、いちいち言われなくてもそうするつもりだった。
「じゃあ、またな」
「うん。今度は田辺と仲良く俺の前で愛を誓うんだよ?」
「うっせぇい」
まだ何か言いたそうにしていたけど、一方的に電話を切って俺はちっちゃい背中を追いかける。
じっとしているのが嫌いなだけあって、田辺はとても足が速いけども、残念なことに俺はもっと速い。
だから、俺が田辺の腕を掴むなんて、時間の問題だった。
「…放せよ」
庭に出てしばらくして、田辺の手首を掴むと、絞り出すような声でそう言われた。
「なんで?」
どうしてそんなにも俺のこと拒否るのだろう。
こっちを向いてほしい。
「なんでってなんでだろう。俺にもよくわからない…」
星空の下で、田辺は弱々しく、はきだした。
「わからないんだ!」
「田辺…」
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