感情・6




それでも、もしも、俺のせいで田辺の兄が消えてしまったと、
田辺が知ったら、田辺はどう思うだろう。
俺のこと恨むかな。


「神さまは、どうして俺に田辺のことまかせたの?」

携帯にひそひそ声を吹き込んで聞いたら、神さまは「えらく長い回想だったな」とか静かに笑う。

ひどい人だ。

俺がこんなにも深刻に悩んでいるのに。


「……答える気がないなら、聞かない」

俺は少しすねて、電話を切ろうとした。
すると神さまは「待て待て」と慌てて言う。

「はじめにも言ったけど、田辺のこと幸せにできるのはお前だけだ」

「何それ、そんなわけがないじゃん」

「あれお得意の自惚れは?」

「しないって。田辺は俺にとって特別だから、そんな軽い気持ちになれない」

「うわーミチユキ本気だぁ」

「なんだよ、その、言い方!」

「だって、あんまりにも真剣ラブだから、おかしい!」

「おかしいとか失礼だろ!」

「えーそうかなー俺なら許されることじゃないの?」

「うわ、まじ、なんで貴方はそう」

「あはは」

俺は誰よりも君のそばにいたじゃないかって神さまは笑い飛ばした。
俺もなんだかそれがくすぐったくて笑った。

「……?」

途端、俺の後ろに気配を感じて振り返ると田辺が顔を歪めてそこにいた。






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