感情・5




俺たち天使は暇だと嘆いた。
生きている意味なんてないのだと嘆いた。

……どうしてそうなったのだろう。

かつては暇じゃなかった。
退屈なんかじゃなかった。

なのに、どうしてずっと安らかに眠れなかったのだろう。
心のどこかに違和感を抱えていたのだろう。

感情なんて持っていないと言っていたのに。


『大切なことが俺にはわかった』
ある日、とても大切なことに気がついた俺は神さまにそう言った。

その後で、人間界に降りたいと提案した。
そう、今、こうして俺たち天使が消してもらおうと必死にやっているこのゲームだ。
何処かで間違えたままになっている考えを、リセットするための。
神さまが少しでも憂鬱を忘れられるような…
ほんの小さな俺の抵抗。

感情はやっかいだけど大切なんだと、言いたかっただけ。


真っ先に伝わったのは田辺の兄だった。
彼は、最後に、無を選んだけれど。

俺の想いは何処かで婉曲してしまったけれど。
俺は最善をつくしたつもりでいる。






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