感情・4




『ありがとうって言ってもらえたら嬉しんだ』


田辺の兄は突発的に生まれた素直な天使だった。
そして天使が好きでしかたない奴だった。
自分のことよりも他の天使のためを思って生きている天使だった。
思わず、俺が一度そんなことして何になるんだと聞いたら、彼はそう言ってニッカリと笑ったのだった。
衝撃的だった。


俺たち天使はなくしていたものを思い出しかけていた。
もういつの話かもわからないような昔のことを。

殺伐とした天界に、彼のように優しく強い天使がいることは、とっても、いいことだと俺は思った。
だけど、神さまは『心配だな』と呟いた。


『天使は神さまが作ったものじゃないのかよ』

『似たようなものだけど、性格とかは俺の思い通りにはいかないよ?』

だから彼ように献身的な天使が突如、ここに誕生してしまったということか。


『代表的なのが君だしな…』


君は俺に従順な右腕になるはずだったのに、あまのじゃくになってしまった。
神さまは冗談っぽく笑って手を叩いた。
なのに、
なんて悲しい瞳をするんだろう…






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