意思・2
=ミチユキside=
チトセが健気に空に向かって何かしら呟いているのを遠目で見つつ、俺がそこに触れていいものじゃないと思い、背中を向けていたら、神さまから着信が入った。
「はい」
こんな時間になんだろうと不機嫌に電話に出ると神さまはすねたように「冷たいじゃないか」と言った。
「ミチユキ、聞きたいことあるんだけど、いいよな!」
「はいはい、選択権なさそうなんで、聞くよ」
「ありがとう…」
神さまにしたらめずらしく弱々しい声だ。
「ね、ミチユキは忘れたいこと、叶えたいことある?」
「ねぇよ」
そんな希望系じゃなくて俺は頑張って現実にするつもりだしね。
「あはは、そう言うかなって思っていたんだけど。じゃあ、聞き方を変えるな。ミチユキは、昔俺に言ったよな。感情と記憶とは別だって」
「ああ、言ったな」
「なんとなくわかった気がしたんだ」
「いまさらだけど、よかった」
「淡々とながしてくれるな、こうなんか、おめでとーってないの?」
「おめでとーっ」
「わざとらしい棒読みありがとう」
「ばれたか…」
「俺とお前、何年の付き合いになると思ってんだよ」
「あー確かに長いな」
もう年数なんてわからないくらい一緒にいたな。
好きだとか嫌いだとかそんな感情もなく、ただそこにいてあたり前だと思うくらい、ずっと年数を重ねて生きてきたな。
なんて思いだすと懐かしい。
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