窮屈・1
=チトセside=
『チトセの家はお金持ちでいいなー』
『うん、家も大きくてうらやましい』
『それにお母さんもお父さんも優しくてぇ』
何も知らないクラスメイトは口ぐちにそう言った。
俺はそれがとても窮屈だった。
小学生の頃。
ランドセルもみんなよりもいいやつを買ってもらって、
服だってブランド物を着せてもらって、
髪の毛だって一流の美容師さんが……
放課後なんて正門前に家の車が迎えに来る。
習い事だってたくさんして、
俺の人生に足りないものなんてないと思っていた。
でも…
本当はうらやましいのは、皆の方だ。
俺だって放課後に学校に残って、遊びたい。
駄菓子屋さんにも行って100円くらいの買い物に幸せを見つけたい。
くせ毛が気になるんだとか…雨の日は友達と一つの傘に入って結局二人とも濡れてしまうとか…着る服に悩むとか…そんな経験、してみたかった。
そして、夢を見たかった。
現状に満足しているくせに、もっとよくなればいいなって、笑いたかった。
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