期待・4
「永倉くん…あのね、急にこんなこと言って困らせたら、ごめんなさい。私、永倉くんのことが、好きなのっ」
ある日、人気のないところで学校一の可愛い子と噂の女に告白された。
俺なんかの何処がよかったのだろう。
「よかったら、お付き合いして下さい」
彼女はそう言って必死に頭を下げた。
俺なんかにそんな価値があるのだろうか。
一生懸命な彼女を前に、俺は冷めきっていた。
現実味がなかったといえばしっくりくるのだろうか。
気が付いたら、彼女の手を取り、俺は彼女を抱きしめていた。
共感してしまっていたんだと思う。
くわしくはわからないが、彼女は俺に告白すること、俺のことを好きでいることに、何処か俺に似た悲痛を感じているみたいだったからだ。
似た者同士。
「俺でよかったら…」
「ありがとう」
彼女の手を取って思った。
全ては時間が解決してくれるんじゃないかって。
チトセを想うこの気持ちも、時とともに、薄れていくんじゃないかって。
たくさん彼女といれば、彼女を好きになれるんじゃないかって。
できるわけないって、知っている癖に、俺は…
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