期待・1
=ユウキside=
誰といても一人ぼっちだった。
俺はそこにいるのに、いないようなものだった。
全く自分というものが持てなかった。
自分自身それが大切なことだとも想いもしなかった。
「本当にユウキは無口ね」
母がよく心配そうに俺に告げた言葉だった。
俺にはその言葉の意味がわからない。
世界の時間は勝手に流れていく…。
いつか安らかな眠りが訪れるのだろうとか、考えた。
期待なんて知らなかった。
誰といても一人ぼっちだった。
俺はそこにいるのに、いないようなものだった。
「悲しいの?」なんて問いかけられる。
そんな日がくるなんて…ないはずだった。
「俺、冨田チトセ。君は?」
「永倉…ユ、ウキ…」
本当に小さい頃の話になる。
俺にチトセが笑いかけてくれた時の話なんて…
いつだって昨日のことのように思いだせるのにな。
[*前] | [次#]
目次に戻る→