邪魔・2
=チトセside=
田辺が俺に抱きつこうとしてきたんやけど、急に何か思いたったように俺から一歩離れる。
俺は田辺に何かしてしまったんやろうかと不安になる。
手元に渡されたドロップの存在なんて忘れてしもうたみたいにな。
「…田辺、どうして」
どうして急に俺と距離なんか取るんや?
全て素直に聞けなかったけど、俺は必死に田辺を見つめて答えを待った。
別にそれが俺を傷つけるような言葉でもよかった。
ただ、言葉を待った。
ただ、答えを待った。
ほんま、意識そこばっかで、俺は自分の手からドロップが床に落ちて、中身が廊下に散らばっていることにも、気づかんかった。
「チトセ」
「!」
ほんま、気がつかなかった。
いつの間にかユウキが俺のすぐ隣にいることも。
「ごめん、俺、ついついチトセが可愛かったから抱きつこうとしたけど、変な意味ないんだよ?」
田辺が淡々とユウキを睨む。
あの、純粋無垢な田辺が…思いっきり、嫌味な笑みを浮かべている。
ユウキは冷えた瞳をして、かたく閉じていた口を開く。
「そもそも兄弟だろ…お前ら、変な気なんてあるわけないじゃん」
「…ユウキ?」
俺も見たことない、ユウキの険しい顔を横にして俺はどうしたらいいのかを考えた。
考えてもしかたないのに…
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