正面・2




=田辺side=


チトセが涙をぽろぽろと流すのを見て、俺はやりきれない気持ちになった。

きっとユウキにはユウキの都合があるのだろうけども、俺はどうしてか、チトセの方に感情輸入してしまうから、ちょっとユウキに腹が立つ。

渡り廊下の端っこで俺はチトセの肩をさすりながら、何も言わず傍にいて見守っていた。

やがて、チトセが泣きやむと小さく「ありがとう」という言葉が俺の胸へと響く。


「田辺って最近あったのに、ずっと前から一緒にホンマにおったみたいやな」

えへへと照れくさそうにチトセは俺の手を握る。
まだチトセの手は震えていた。


「…ずっと一緒にいたつもりだったよ。俺は空からしばらくチトセのこと見ていたから」


「え?」


「だから、俺に何も隠すことなんてないって思う今さらさ!」

「じゃあ…俺が性格悪いってことも、本当の願いも知ってるん?」

「…予測はできても、俺はチトセの心までは見えないから、言ってもらわないとわからないかな」


そう、見たままを信じて、間違ってないなんてこと、言えないから。






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