裏側・4
=ミチユキside=
好きな子が笑っていたら嬉しい。
でも、その限りなく素敵な表情を
俺以外の誰かがみているのが嫌だと思った。
馬鹿らしい。
そんなちんけな嫉妬で、俺は楽しそうにしていた田辺の顔を曇らせてしまったんだ。
今さら、反省と後悔を繰り返している。
どうしようもないのにな。
「……あれ?」
田辺の傍にいたら、また何か田辺を落ち込ませるんじゃないかと思った俺は授業を受けている田辺を教室において、一人屋上で空を見上げていた。
すると、急に、俺の後ろから疑問符が聴こえてくる。
俺が振り返るとそこにはユウキがいた。
「誰だっけ?」
ユウキは俺をまっすぐに見つめて問いかけてくる。俺は、意味がわからない。
俺って田辺以外には見えない設定じゃなかったのか、神さま。
今、ユウキが俺のことまっすぐに見ているっておかしくない?
いや、神まさも失敗とかすだろうし、うーん?
「いや、忘れている俺も悪いけど、無視するなよ」
ドカッと、俺の向こうにあるフェンスを足蹴りにして、ユウキは俺を睨んだ。
和幸に少し似ているような気もする。
チトセの前じゃあ、優等生ぶっているように見えていたんだけどな。
「んだよ、その顔…」
おもしろくないと言った風にユウキは俺を見上げた。
俺は「驚いただけだ」と呟いてみる。
そうしたら、今まで俺の声も姿さえも見えていなかったユウキは「驚いている顔じゃないだろ」と反応を返してくれた。
ちょっと感動した。
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