裏側・3
「すげぇー俺のボサボサが綺麗になった。やっぱりすごい、チトセってすごい」
「そんなことないで」
「あるって、だって俺こんなにも感動してるんだから」
人のって言ったらおかしいかもしれないけど、天使の心を動かすなんてすごいことだと思うぞ。
「……照れるわ」
「?」
「あんま、そんなこと言われへんから、俺って」
小さく俯いてチトセは呟いた。けど、すぐに顔を上げると「遅れるで?」と俺の肩を叩く。
本当だ…いつの間にか、もう、家を出ないといけないような時間になっている。
てか、ミチユキ。
今日は機嫌悪いな。
昨日はなんだか、ミチユキが俺の傍にいてくれて、嬉しかったのに…
とか、そんなことを考えながら、ミチユキの方を見ていたら、ミチユキが「その髪、似合ってない」と言いやがる。
ほっとけ、どうせ、髪の毛を綺麗にしたところで、俺の顔はかわらねぇよ。
でもさ、少しでも見た目がよくなりたいって思ったらいけないことか?
「田辺?」
「え」
「どないしたん、なんや、落ち込んでる?」
通学路の途中でチトセが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
俺は首を横に振ろうとしたのに「実はな…」と話しだしてしまった。
「俺、この髪の毛似合ってないかなって…俺なんかがこんな髪の毛だけ綺麗にしても、なんか、浮つかないかなって」
「ぷっ」
「失礼な、俺は真剣に!」
「大丈夫やって、田辺、綺麗な顔してんもん」
「え?」
そんなわけがないだろって俺は言った。
ミチユキは俺の隣でさらに不機嫌になっていた。
どうしたんだろうな、一体。
[*前] | [次#]
目次に戻る→