相違・3
「てか、なんだよ、急にっ」
放せとは言わないけども、俺はミチユキの行動にあたふたした。
なんで、抱きしめられているんだろう。
わからないです、神さま!
「田辺がさ、田辺が、精神論に気がついてくれたから…嬉しくて」
「精神論…?」
俺はミチユキの言いたいことがわからずに聞き返した。
「ああ、気持ちって大切だよな。たとえばさ、こうありたいって願望が叶っても、そこに思いやりとかないと意味ないじゃん。チトセは、ユウキとキスがしたいと望んでいたとしても、それは練習相手とか欲望のはけ口とかじゃなくて、ちゃんと自分を恋人としてみてのキスが欲しかったはずなんだ。人も天使も神様もみんなみんな目的ばかり先だったら、感情を置いていってしまうけど、そうじゃないって俺はずっと思っていたんだ。なかなか…誰にも伝わらなかったけど。間違いを受けとめて悲しい想いをした人以外はね。わからないみたいでさ」
だから、田辺がそれに気付いてくれて嬉しいよと、綺麗な顔でミチユキはほほ笑んだ。
それがあまりにも寂しくて切なくて、俺は、ゆっくりとミチユキのこと抱きしめ返してやった。
本当はね、ずっとずっと、
認めたくない感情があったんだよ。
決して、叶わない恋だと思っていたんだよ。
あ、嫌だな…
泣いてしまうなんて、これじゃあ、俺は…
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