恋心・3
「けど、今、思いだした。俺のこと、田辺にしか見えない設定になってるんだけど…」
ミチユキはどうしようかと首を傾げた。
俺はそれなら、俺が二人を相手にしてもいいとかでしゃばったことを提案した。
きっと上手く行くと思う。
俺、もう、あの日の俺じゃないんだから。
「でも…問題なのは、ミチユキ」
俺はできれば自分の口から言いたくなくて、瞳で訴えてみた。
すると、ミチユキは「ああ」と深くうなずいてくれた。
よかった。
「あの二人、友達って関係じゃないだろう」
「明らかに、ね」
「そうなると難しくないのか?」
「うん、問題はそこだと思う。恋人じゃないのに、恋人みたいなことしているとなると、願いごとがないんじゃないかって…」
「……な、心って大切だと、思わないのか?」
「え、心? なんで?」
「あー、なんでだろうなー」
やりきれない顔をして、ミチユキは忘れてくれってか細く笑った。
俺、何か、ミチユキによくないこと言ってしまっただろうか…
わからないや…。
でも、尋ねても、ミチユキは何でもないという。
本当、わけがわからない。
しつこく、食い下がったら、今度はミチユキは無言で険しい顔をしたかと思うと、そのまま俺にキスをした。
触れるだけの、優しいキス。
「……………」
俺の頭は完全にショートした。
おかげさまで、五時限目と六時限目の授業は気が付いたら終わっていた。
ただ、俺の頭の中で「こういうことだけど?」と言った、ミチユキの深い顔は消えずにまだ俺に何かを問いかけてくるけども…
ま、気にしないでいいとミチユキ言っていたし、忘れよう。
それが、きっと、いいに、決まっている。
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