恋心・2
体育の授業はなんかよくわからんが、ずっと校庭に書かれた楕円の周りを走り続けるという夢のような授業だった。
クラスメイトたちはそれをマラソンとかいっていたけど、正直名前なんて何でもいい。椅子におとなしく座らないでいいなら、俺は六時間こっちがいいな。
三時限目の体育でたくさん動けて幸せ気分一杯で俺はいつの間にか四時限目も頑張ることができた。
そして、今はお昼休みだ。
なんか、チトセとユウキは大切な用事があるそうで、二人で屋上に行ってしまった。
「追いかけなくていいのか?」とミチユキが俺に囁くけど、俺は首を振って、中庭に出た。
ここなら、俺が俺以外には見えないミチユキと話しても、独り言を延々と言っている変な奴に見られる心配はなさそうだ。
「ミチユキは、気がつかなかった?」
「何に?」
「チトセくんの、恋」
「んや」
それはちっともわからなかったと、ミチユキは首を振った。でも、気づいたことがあるんだと自慢げに俺に肩に手を置く。
「でも、ユウキはチトセのこと、好きなのはわかった」
「えええぇーっ!?」
「なんだよ、急に」
「マジで!?」
「ああ、俺が言うんだから、間違いないって」
「待てよ、じゃあ、二人は両思いなのに、あんなにも切ないことしてんの!?」
「田辺のいう、チトセの恋ってユウキが相手なのか?」
「間違いないって、だって、完全に、熱かったから目線が!」
「はぁあ、なんだかな…」
「ああ、本当、なんだかな…」
俺たちは大きな溜息をつくと、ポケットから、ドロップの缶を同時に取り出して、笑った。
「「また、やってみますか?」」
悪戯小僧のように瞳を合わせて、俺たちはドロップの缶を再びポケットに戻した。
食べさせた相手が何でも言うことを聞くとかいう嘘だらけのドロップ。
また使うなんて俺は思わなかったけど。
だって、これ、非常食くらいの気持ちで、俺はポケットに入れていたんだし…
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