承認・6
=チトセside=
俺のところに天使っていうものがやってきたんやけど、正直、俺のことろにくるわけがわからんかった。
俺って最低な男なんや。
誰よりも恵まれた環境にいて、欲しいものも全部持っている。
なのに、いつも空っぽのような気がして、
いつも密かに安らかに眠りにつけることを望んでたんやで。
やのに、天使って。
どないして、悪魔やないんやろうかって思ったら、その天使は……いや田辺は俺に言うてくれたんやわ。
自分もそんなことを考えていたことがあると。
そして、約束してくれたんや。
俺に安らぎをくれるって。
ホッとしたわな。
昨日は久しぶりによく眠れたわ。
ゴールの見えないマラソンのようなこの人生も、もうすぐゴールなのかなって思うと、なんや、空気が吸いやすいわ。
「なぁ、チトセ、俺の髪の毛おかしくない?」
寝癖がなおらないと言いながら、半泣き状態の田辺は俺に、救いを求めてきているようだった。可愛い奴。
「ほな、頭貸してみぃ」
「うん」
「ちょっとな、乾いたらパリパリするんやけど、ワックスでなんとか固めとくからな、無理に触ったらあかんで?」
「うわ、ちょっとすごいな、俺の髪の毛、何年振りかに綺麗だ!」
鏡の前にしがみついて、それなりに整った髪の毛を嬉しそうに田辺は見つめた。
そんなにも喜ぶことなのだろうか。
俺にはそれが不思議で仕方なかった。
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