承認・5
「田辺ってば、学校だよ!」
おきて起きてとチトセは田辺を起こしている。
田辺は「後もう少し…」と言ったきり、目を覚まさない。
「遅刻するよ! 学校に行かないと、ね」
「…がっこう?」
「学び舎や、ほら、勉強するところや」
「あああああああー」
悲鳴を上げて田辺は起き上った。
「なんていう設定だよ。俺、勉強嫌いだから、学校行きたくないのに。神さまはなんて意地悪なプログラムをつくったんだよぉ」
田辺は文句をぐちぐちと口にする。
が、決して手を止めずにテキパキと学校に行く支度をしている。
確かに田辺は勉強は嫌いかもしれないが、学校自体は好きだったはずだ。
嫌だと否定しても心のどこかではわくわく感があるんだろうな。
本当にまだまだ子どもだ。
「……な、田辺、俺のこと楽にしてくれるって昨日言ってくれたよな」
不意に真剣にチトセは田辺に話かけた。
田辺は軽々しく「うん、約束」とか言って笑った。
……田辺、お前は一体どうするつもりなんだ。
まさか、本気でその子が望んでいるように息を止めてあげるのか…?
そんなのって…
ねぇよ。
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