「倉木…本当は俺、が、もっと何かを望んでいるんだ」

「え?」

「いつだって倉木は優しいから、俺が甘えてしまいたくなる言葉をくれるけど、それじゃあ、だめだなって思ってさ」

「だめなの?」

僕は足をとめた。なんでだろう、先生が遠い。


「……だめ、なのかな?」

「違う、倉木を責めているじゃないんだ。俺が、いつまでも倉木に甘えていてさ、俺にだって、倉木に甘えてほしいっていうかそのなんだろうな、その、つまり、安らぎを与えてあげられたらいいのにって、でもそんな方法、俺にはわからないし、だから、なんとかしたら、できるんじゃないかって思って」

俺が感じたように、倉木にも温かいものがあげられたらいいのにって先生は声に出す。
本当、僕は幸せ者だな…


「先生」

僕は蓮見先生に抱きついた。


「く、くく、倉木っ外じゃあ、そういったことするなって倉木が言ったんじゃないかぁ!」

「…え、先生がしたらいけないって約束」

だから、僕はいいんだよって笑った。すると先生は理不尽だと言う。

そう、理不尽だ。


「それに、先生、僕は何回も言っているけど、傍にいてくれるだけでいいんだよ」

「でも、そんなこと誰にだって…」

「できないよ」


そうできない。


「だって、僕が愛してほしいって願うの、先生だけだし、先生はそれをいつも僕の横で叶えてくれるし、僕はそんな素敵な恋人しか、そばにいても…あの、上手く言えないけど…そういうことだよ」


「わかったわかった」


本当に家についたら、覚悟してくれって先生は僕の頬に触れた。

単純…すぎるよ、先生。でもそんなところも好き。






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