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「小雪それは損じゃない」
「どうして余計なお世話って言うんだよ?」
「俺は、小雪が俺と中佐都のこと心配してくれたのが嬉しいから」
「なんで…そんなことが…嬉しいのかわからない」
別に菅野くんのためじゃない。一樹のためじゃない。ただ二人が仲良くしているところを見ていたら、僕はなんだか安心するから、だから、僕は二人が変なすれ違いをしそうで心配だっただけで…。僕は僕のことが大切だっただけで。僕は……僕は…
「僕は…」
「ほら、逃げんな」
「うわっ」
「何、小雪ちゃん、ちょっと手を引っ張っただけでそんなびくつくなんてぇ」
「やめてよ、こう見えても僕、デリケートなんだから!」
「見たまんまじゃん」
「え、嘘、そう見える?」
「ああ」
「そう…」
「どうしたんだよ、急に何を一人で完結しているわけ?」
「なんでもないよ」
ただ、嬉しかったんだ。僕って無神経な前向きな子ってよく思われるから。そうやって本当はチキンだとかわかってくれていると思ったら、嬉しくて。
「ただ、菅野くんって馬鹿だなって」
「なんで、なんでだよ」
「だって、僕に必死すぎて、恋人がそこで寂しそうに立っていることに気がつかないなんて最低」
「え?」
僕は菅野くんの目の前から指を出すと屋上の入口に向けた。そこには心配そうに泣き出しそうに立っている一樹がいる。
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