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「悪いことじゃないのかな…」
僕は今までずっと大切にしてきた気持ちがころっと変わっていることに、不信感を覚えた。でも、一樹はそんなことないんだと言ってくれる。
「だいたい、生きていたら、感情はその都度に変わるって」
仕方ないんだと一樹は困ったように笑った。
「それもそうだよね」
ちょっと前までは、一樹が前向きになったのを、僕は、菅野くんの影響だから、嫌だと思っていたのに、今は一樹が幸せそうでよかったと思う。本当に、嬉しいと思う。どうしてだろう。それに菅野くんにだってお礼を言ってもいいくらいに、僕は。
「なぁに、なんの話?」
二人して俺をのけものにするなんてひどいじゃないかって言いながら、菅野くんは僕たちの間にこっそりとたった。
どうやら、菅野くんは一樹のことも僕のことも信頼していないのかもしれない。
見たらわかるはずなのに、な。
一樹が菅野くんにベタ惚れしているってこと。
「僕の家のことで相談していたんだ。菅野くんをのけものにしようなんて0.2ミリしか考えていないし」
「なんだよ、そのわずかな、差は」
「だって、僕ね、菅野くんが好き」
「……どっ、な」
何が言いたいんだと菅野くんは喉を詰まらせている。
いい気味だ。
「菅野、何、顔赤くしてんだよ。菅野は、俺じゃ…だめなのか?」
上目使いに一樹は菅野くんの服を引っ張る。
本当に、いい気味だ。
思い知ればいいのに。
一樹がどれだけ菅野くんのこと好きでいるかを。
「もう、いちゃつかないでよ。僕のは冗談だよ?」
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