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チャイムが鳴った。
僕は教室の窓から外を眺める。
グランドでは優香のクラスが50メートル走をしている。
相変わらず、優香はすばしっこい。
余裕で一位を取ると、嬉しそうに、こっちを向いてピースする。
僕は窓越しに手を振って「おめでとう」と言った。
すると、優香は「あったりまえだろ」と笑った。
あれから、今日で一週間がたつ。
僕が僕の周りにあったはずの幸せに見向きもしてなかったと気がついたあの日から。
優香が僕のためになりたいんだと言ってくれたあの日から。
一週間がたった。
でも、何もかわらない日々だ。
菅野くんは猫かぶっているし、一樹は勉強熱心だし、賢也は明るくふるまっているし、優香も…
別に変わらない日常に文句なんてない。
いつだってこのままが続いたらいいのにって願っていた。
それに、僕は今の僕の幸せなことに気がつけて、
とても満たされているような気持ちになるのに…
やっぱり僕って欲張りで仕方ないね。
「ねぇ、一樹。僕って心変わり早いなんて、最低かな…?」
休み時間になると僕は菅野くんよりも早く一樹のもとに行って、呟いた。別に答えも何も望んではいなくて、ただ僕が思ったことを伝えてみただけのことだ。前に一樹は言ってくれたから。僕のこと心配だから何かあったら教えてほしいって。でもいつも一樹からは優しい言葉が返ってくるんだ。
「それは悪いことじゃないと思うが…」
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