「僕ね、ずっと孤独だった。一樹がいても孤独だった。僕はいつだって決めつけていたんだ。この気持ちは誰に話しても誰にもわからないと。だから、ただ自分のなかで消してしまおうとして、その度になんだか、本当に自分が一人ぼっちな気がしてね…馬鹿らしいよね。一樹っていう大切な友達がいるのにも関わらず。最低だし、醜い」


あの日、一樹は僕に世界をくれた。だけど、僕に安らぎをくれたわけじゃない。ただ一樹の隣では何もかもが輝いて見えて、自分の中に何もないことに気がついて。幸せが僕からほど遠いものだと知ったんだ。


「いつだって僕には降り注がないって思っていた。人並みでもいいから幸せになりたいと思っていた。でも何もかもが、遠く感じて、暗黙に消えていくような…そんな希望なんていらないって思った。望まなければ、忘れることができたなら、僕は、焦ることも不安に思うことも傷つくこともないんだって」


自分にさえも嘘をついて、誤魔化した。一樹が僕のことを心配しても、賢也が優しい顔をしても、それさえも振り払って僕は自分を守っていたんだ。話すことによって理解されない時のあの空虚感を思い出すと、どうしても何も言いだせなかった。

そう、僕はもう普通に生きることなんてできない。感じるということを僕は放棄していた。だから、幸せだと、感じることも、許されないのだろう。


「だからね、優香は僕のこと知りたいって言ってくれたけど、僕は、空っぽなんだ…」


いつの日か、感じること考えることをやめた。ただいい人ぶっていた。
そこに僕の意思なんてものは存在してないんじゃないだろうか…




「何もないんだ…」



どんなに誰かに好かれても、どんなにいいことがあっても、僕はその感情を保てない。すぐに忘れてしまう。それが何よりも辛い。

けど、ホッとするんだ。






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