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別に何もかもを疑って生きているわけじゃない。ただ信じていたことが簡単に壊れる世界だと僕は知っているだけ。
たとえば、毎日平穏に来るはずの朝がある日来なかったり、
たとえば、ずっと一緒だと疑いもしなかった家族がバラバラになったり、
たとえば、いつも通りのささやかな幸せがなくなっていたり、
誰かからしたらたいしたこともないし、その辺のテレビドラマとかからしたら、なんてことない悲劇だけど、僕にしたら、とてつもなく苦痛だった。
住む家にも食事にも服にも困ったことなんてないけども。
僕は…とても…憂鬱だった。
いっそ完全に可哀相な子になれたならば、誰かに救いの手を差し伸べてもらえたのかもしれない。いっそ完全に駄目な子になれたならば、誰かに理解されないということさえも気付かずにいられたのかもしれない。
孤独。
だから、だからね、
誰からも嫌われたくなくて必要とされたくて、僕はいい子でいた。
そう、いつだって僕の中の暗がりはひた隠しにして、いた。
小学校の時はそれでいじめにもあったかな。相手は僕のこと完全に誤解していたけども。
事実、僕はいじめなんかよりも、
僕のことを裕福で幸せな奴だと思われることがとても耐えられなかった。
『明日なんていらない』
一度、身を呈して僕のことを助けてくれた一樹にそう言ったこともあった。
その時、一樹は僕に『明日は何か変わるかもしれない』と見たこともないような情けない顔でつぶやいてくれた。
そうだね…僕は確かに知っていたんだ。
ただ信じていたことが簡単に壊れる世界だから、
明日は、今日よりもいいことがあるかもしれないって。
ああ、そうだった…そうだったね。
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