9
「どうしてって、どうして僕は優香がそんなことを言うのか、わからない」
何もそんなに必死にならなくてもいいのにと小雪は言った。
俺はだから言ってやった。
絶対に顔赤くなっていて、格好よくもないだろうけど、今、そんなもの取り繕っていられない。
「好きだから…」
「え?」
「だから、俺は小雪が好きだから」
「……優香?」
正気かって顔をして小雪は俺から一歩引いた。
「なんでそんなこと…」
悲しそうに眉をひそめて、小雪は首を横に振る。
ああ…これは言ったらいけないことだったのかもしれない。
「なんてな。驚いたか?」
俺はおどけて見せた。
ああ…痛いな。
やっぱり嘘をつくのは心が痛いよ。
それは小雪だって同じはずだ。
「驚いたよ…」
ぽつりと小雪は呟くとまっすぐに俺の方へと歩み寄ってきた。
「本当に驚いたよ。優香、嘘下手だよ…。たとえ、それが嘘だと気がついても、僕は、気づかないふりするのに、なのに、どうして僕は、今とてもそのことについて追及したいんだろ…そんな自分に驚くよ…」
「…え?」
ふわっと小雪は俺を抱きしめて弱々しく囁いた。
「その傷につけこんで…ごめんね」
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