「どうしてって、どうして僕は優香がそんなことを言うのか、わからない」

何もそんなに必死にならなくてもいいのにと小雪は言った。

俺はだから言ってやった。

絶対に顔赤くなっていて、格好よくもないだろうけど、今、そんなもの取り繕っていられない。


「好きだから…」


「え?」

「だから、俺は小雪が好きだから」


「……優香?」


正気かって顔をして小雪は俺から一歩引いた。


「なんでそんなこと…」

悲しそうに眉をひそめて、小雪は首を横に振る。
ああ…これは言ったらいけないことだったのかもしれない。


「なんてな。驚いたか?」

俺はおどけて見せた。
ああ…痛いな。
やっぱり嘘をつくのは心が痛いよ。
それは小雪だって同じはずだ。


「驚いたよ…」


ぽつりと小雪は呟くとまっすぐに俺の方へと歩み寄ってきた。


「本当に驚いたよ。優香、嘘下手だよ…。たとえ、それが嘘だと気がついても、僕は、気づかないふりするのに、なのに、どうして僕は、今とてもそのことについて追及したいんだろ…そんな自分に驚くよ…」


「…え?」


ふわっと小雪は俺を抱きしめて弱々しく囁いた。


「その傷につけこんで…ごめんね」






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