７
「いいよ、ありがとう」
大丈夫だと小雪は笑った。
本当、上手に笑った。
けどさ、俺にはわかってしまったんだ。
それはいつもの作り笑いだって。
「……無理すんな」
「え、やだなぁ優香。僕が無理なんてしたことないし」
とんっと俺の胸を叩いて小雪は俺の腕の中から抜け出した。
その瞳はもう泣いていなかったけど…
虚ろだった。
「それに、言ったところでどうなるの？」
淡々と小雪は言葉を紡いだ。
はじめて聞いたかもしれないような冷え切った声で。
「…………」
俺は言葉に詰まった。
確かにそうだろうけども。
反論できない自分が歯がゆかった。
「なぁんてね。どう、僕役者になれるかな。今のシリアスじゃなかった？」
にぱっと楽しそうに笑うと小雪は俺の顔を覗き込んだ。
ああ…
余計な気を俺は使わせている。
俺が小雪を気遣っていたつもりなのに…
どうして小雪が俺に気を使っているんだろう。
情けない。
本当に情けない。
だけど、俺は、騙されるつもりなんてない。
俺だけは、流されてやらないんだ。
だって、ちゃんと、君を知りたいよ。
嘘ばかりついて誰にも心配をかけないようにしている、小雪のこと、
俺は心配だから…
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