「……あのさ、小雪」

リビングでカレーを食べながら、俺は隣でバラエティー番組を見ている小雪に話しかけた。

だって、冗談返しだとしても、普通、キスなんて、するかよ…


「小雪は平気で、誰とでも、そのキスできるの?」

ああ、取り繕っても、声、震えてるし、俺。
小雪はきょとんとしているし。

なんか、意識してんの俺だけみたいで、すっごく馬鹿らしい。

「深い、意味なんてないんだ。ただなんとなく気になったと言うか、そのななんていうか…」

格好悪く俺は手を振って誤魔化そうとした。
すると小雪は「違うの」と首を振った。

「僕、優香が変なこと聞くんだなんって思ったんじゃなくて、僕っておかしいなって。なんでだろう。冗談だったとしても、軽々しくてしもいいことじゃないよね、キスって」

「……そうだろっ」

「うん」

落ち着け俺。
小雪の口から『キス』って単語が出たからって…

「でも、僕はただ、僕が驚いたように、優香も驚けばいいのにって思っただけだったんだけど…」

うーん、と小雪は首を傾げてテレビを消した。

「ごめん、嫌だった?」

しばらくの沈黙の後、小雪は俺を見つめて真剣に聞いてきた。






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