第九話




=優香side=


本当はたいした意味なんてないんだ。
こうして広告を見て少しでも安く買おうとするのは俺の自己満足なんだ。

それにさ、小雪のこと、考えているのが好き。
こうして、小さなことでもいいから、少しでも小雪の負担が減らせたらいいのにって考えている自分が好きだ。

俺にもまだ誰かを想う気持ちが残っているんだって思えてさ。

それが嬉しんだ。
まるで馬鹿みたいな話だけど、ね。



*****


「優香!」

いつものように晩御飯の用意をしていたら、小雪が台所に走りこんできた。

「あわただしい。今、俺はカレー作ってんの!」

触れ合いそうなくらいに小雪が俺に接近したらから俺はつい、恥ずかしくなって無愛想なことを言ってしまった。
ま、いつものことなんだけどね。
憎まれ口ばっか…小雪に聞いてるし…

「優香、こっちむいて」

「なんだよ、だから、俺はカレーを…っ」

意識が飛ぶかと思った。


「昨日、の、仕返しだよ」

軽く触れるだけのキスをして、小雪は悪戯っ子のように笑った。


俺はただ立ちつくした。






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