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「…ぅん、あ」

僕の唇から、優香の唇が離れて、僕は必死に酸素を吸った。

「小雪」

「?」

名前を呼ばれて僕は優香の方を向いた。
まだ、上手く息が出来ない。

「俺にとっての小雪ってなんだと思う?」

「は?」

「だから、俺にとっての小雪ってなんだと思う?」

「そんな、わからないから、聞いたんだ…」

「そっか。じゃあ、答えてあげる。俺にとっての小雪は家族だよ」

「…ぇ?」

「嘘じゃない。俺は嘘が嫌いだからな」

優香はそういいながら、僕の頬に指を這わせた。

「…やだな。怯えないでよ。冗談はこの辺にして、ご飯持ってくるね」

「優香…」

「俺、その名前嫌いなんだ…あまり連呼しないで」

「ごめん…」

「でも、小雪に呼ばれるの、嫌いじゃないから、まあ、いいよ」

そう言って優香はキッチンに消えた。
食器運びくらいしようかと考える余裕もなく、僕は一人、優香が触れた自分の唇に手をあてた。

どうして、優香は、あんなことをしたのだろう。


「……っ」

思いだしたら恥ずかしくて、僕は何回も首を振った。


忘れられるって、ごまかせるって思っていたんだ。

最低だな、僕は。






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