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タイムセールと聞いて僕は、スーパーには、もっと人だかりができるものだと思っていた。
だけど、今僕がいるタイムセールはそんなものではなくて、ほそぼそと値引きしているだけで、人もそんなにいない。
「優香…」
「どうした急に?」
たった50円引きとかのシールが貼ってあるのを買ったり、念入りにチェックされた広告の売り出しを買ったり、
「……なんで、ちょっとしか値段かわらないなら、無理しないで」
いつも、優香は買い物で疲れている。
僕はきっとすごく値段が違うんだと思っていた。
でも、たったの少しだけ。
だったらこんなことに必死になるなんて、おかしい。
「僕、お金はたくさん持っているから、いいんだよ?」
「…嫌だ、小雪」
優香は小さくほほ笑んだ。
「自己満足って言葉知らないの?」
優香は、自分がしたくてしているだけなんだから、と言う。
僕は次の言葉に詰まってしまった。
何か、何か、優しい言葉でもかけられたらいいのに、何も何も思いつかなかった。
「小雪、どうして、小雪は俺が誤魔化そうとしたら、適当に猫かぶって流してくれないのかな…」
「そんなの、僕が聞きたいくらいだ…」
上手く、僕は、優香のことになると、笑えない時がある。
「そう」
優香はそう言って頷くと、僕の腕を取った。
「ほら、兄さん、しっかり」
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