学校が終わったら僕は二人のお邪魔虫にならないように嘘をついて、一人先に帰宅する。
毎日くり返しているのに、なれないな。


「はぁ…」

立ち止まって見上げた空は僕に何も言わない。
ただじっと僕を見下ろしているように雄大にそこにある。
まるで、母さんのようだ。


「小雪」

「え…?」

急に名前を呼ばれて振り返る。
するとそこには優香がいた。
優香は面白くないって顔をして、僕を睨んだ。

「そんな驚くことないじゃん」

「え、そうだね。でも優香が僕の名前呼んでくれたの久しぶりだなって思ってぇ」

「……だから、俺に猫かぶりやめろって言ったのに」

「何のことかな〜」

「無理にへらへらしている意味がわからねぇって言ってんだよ!」

可愛らしい顔を歪めて優香は僕の肩をつかんだ。

「俺は、限界だ!」

「え、優香何かあったの、僕力になるよ!」

「違うんだよ、そんなんじゃないって、どうして小雪はそうやって人の心配すんの。自分の心配もしてやれよ、こんなに、やせ細って、なんで」

なんであんな奴らといるんだよって、優香は言った。


「僕の友達を、あんなって言うな!」

ついカッとなって僕は怒鳴ってしまった。



優香は、ただ黙って
小さな声で「ごめんなさい」と言った。







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